主体的に生き抜く力を育む
教育保育方針
自然に抱かれて好奇心を充溢させ、何事にも意欲的に挑戦し、感性を磨き、「生きる喜び」に
満ち溢れる子供達の姿を求め、主体的に生き抜く力を育みます。
そのために、6つのことを大切にします。
感性を育む
センス・オブ・ワンダー
レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』には、「知 ることは感じることの半分も重要ではない…幼い子ども時代は、 この土壌を耕すとき」と述べられています。
子どもたちは、自然 に抱かれる体験や自然素材との豊かな関わりの遊びの中で、「気 持ちいいな・きれいだな・なぜだろう・不思議だな・すごいな・ こうしたらどうなるだろう」等の体験を積み重ね、活動意欲を高 めていきます。
だから、子どもたちの世界は、いつも生き生きと して新鮮で美しく、驚きと感激に満ち溢れています。豊かな感受 性(感じること)が土壌となって、出会う事実(知ること)の一 つひとつが種子となって大きく芽吹くことになります。
まずは、 感じること、土壌をつくることが大事です。昼間の太陽や光、熱 、そして夜間の月や星、闇等はいうにおよばず、空気、影、温度 、湿度、動植物の命などとの感動的な出会いが豊かな土壌をつく ります。そして、水、砂、土、粘土、木、石などとの遊び、火の 体験などの自然素材とかかわっての遊びが種子となります。
自然 体験は子どもたちの情動に働きかけ、感情を形作ることを助け、 身体全体を通して体験する知的活動への喜びを深めます。
知性を育むリアリズム
知性を育む感覚総体としてのリアリズムを大切にします。
子どもたちにとっては、外界を刺激として感じる機能〈眼(視覚)、耳(聴覚)、皮膚(触覚)、鼻(嗅覚)、舌(味覚)〉の五感の働きが大事です。
私たち大人は一つの機能、視覚や聴覚などは独立していて、見たり、聞いたりすれば、ものや出来事を認識できます。
しかし、子どもたちは5つの機能が合わさって、ものや出来事を認識していきます。5つの感覚が総体となって働くのです。
見て、聴いて、触って、匂いを嗅いで、舐めて、ものを認識していくのです。子どもたちは、このような感覚総体としてのリアリズムで生きて、9歳前後になると、大人のように、それぞれの機能が独立して働くようになります。
それにあわせるように、9歳までに、私たち人間の根幹を成す感情をつくりあげます。
脳の回路を開く
遊び=造形活動
意欲を育む
子ども主体の生活を
大切にします
私たち大人は文字を使う文字的思考の中に生きています。
幼児期の子どもたちの生きている世界は現代文明よりもはるか彼方、絵的思考の世界です。子どもたちは、自発的・意欲的に自然素材と関わって遊びます。
その遊びはまさしく造形活動と呼ぶにふさわしく、長い歴史の中で人間が今日の生活を創り上げてきた歩みを目にするように、過程の1コマ1コマを蘇らせます。創意工夫によって、今に至る生活のプロセスを遊び=造形活動の中で体験し、脳の回路を開いていきます。
幼児期の子どもたちにとって、自然素材とかかわる遊び=造形活動は、創造性を培い、意欲を育みます。
また、私たち人間が力を合わせて生活を発展させてきたように、子どもたちも自然素材で、主体的に遊びを発見し、拡げ、深めて、そして、自信を持てば、友だちに語りかけ、共に遊び、知恵を出し合って、より創造的な大きな遊びを展開していきます。
創造性を育む自然素材
創造性を育む自然素材との豊かな遊びを大切にします。
自然素材は、人工的な素材、玩具などとは違い、無限の可能性を秘めています。
自然素材とのかかわりは、さまざまな遊びを見つけ出し、拡げ、深めて発展させます。子どもたちは、行為的な遊びから、創意工夫を重ね、結果として造形作品を造っていきます。
便利で豊かな生活が、子どもたちの成長に必要な今の生活に至るプロセス体験を奪い、テレビ・スマートフォンなどによるバーチャルリアリティの世界は、子どもたちから主体的なイメージをも奪っています。
そんな現代の生活の中で、生きる子どもたちが相集うこども園には、原体験を重視する新しい役割が求められています。
想像力を育む
美術活動
子どもの絵について
子どもの多様な絵を見ていると、文字を獲得するまでの人類が、絵的思考の中で生きてきた長い歴史に立ち会うことになります。
子どもたちは十分な言葉を持っていません。まして、文字も獲得していません。だから、遊びや生活の中で感じたことをもとに絵で伝えようと自ら本能的に絵を描くのです。
ですから、言葉で伝えられないこと、内面から湧き出る感情、思いなどを直感的に描き込んでいます。
また、その子どもが認識している生活、社会、自然などはいうにおよばず、個性や性格までもが表されています。
子どもの自由画と
色彩感覚について
私たちは、子どもたちの絵を通して、私たちとは異なる絵的思考の中で生きる子どもたちの育ちと心を読みとることによって、子どもそのものを深く理解できるように研究を重ねています。
子どもたちの描く独自の世界を大事にしています。
自由画とは、①テーマを与えず、②技術指導は一切せず、③見守り寄り添い認めて励ます、この3 原則のもと、子どもが描きたいように、子ども自らがテーマを持ち、自らの創意工夫によって、自由に色彩を用いて、独自の表現として生み出される絵です。
子どもたちの独自の表現=自由画は、生きる喜びの証として、心と育ちを語り、絵的思考を深め、豊かな感情を育みます。
子どもたちの自由画は豊かな色彩に溢れています。幼児期の色彩感覚は“絶対色感”と呼ぶに相応しく私たち大人よりも優れています。
おののもりこども園の保育の特徴
美しい自然と地域に抱かれ
体験を通して豊かな情操を育みます
自然体験は子どもたちの情動に働きかけ、感情を形作ることを助け、身体全体を通して体験する知的活動への喜びを深めます。子どもたちは、自然に抱かれる体験や自然素材との豊かな関わりの遊び中で、「気持ちいいな・きれいだな・なぜだろう・不思議だな・すごいな・こうしたらどうなるだろう」等の体験を積み重ね、活動意欲を高めていきます。だから、子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激に満ち溢れています。
子どもたちの自由で豊かな遊びは、彼ら自身の豊かな感性の土壌を耕し、その遊びの痕跡は、結果として素晴らしい造形作品となります。また、豊かな造形活動を体験した子どもたちが描く絵は、生命力に溢れ、私たちを圧倒します。
環境による保育
乳幼児期の特性に合った生活に対応した保育環境を整えるとともに、子ども時代は原始時代、小さな原始人として、五感のすべてを使う感覚総体のリアリズムとして絵的思考で生きる子どもたちに対応した子ども主体の保育姿勢を求めています。
子どもたちが自然に抱かれ、自然素材と遊ぶふるさと体験期を十分に生ききり、子どもが生み出す子ども文化の中でも主要な美術表現を大事にしてきました。レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』に述べられている、子どもたちが不思議だと思う身体的感覚を大事にして、自然が溢れる園庭づくり、自然の中に出かける散歩などに取り組んでいます。
そして、園庭には無限の可能性を秘めた自然素材、水・砂・土・粘土・木・石・動植物等を十分に準備し、子どもたちが遊びを発見し、拡げ、深め、共に遊び育ち合うよう心がけています。群れて育つ保育です。また、それらの遊び=造形活動を行為/状態/配置・配列/構成/場の活動に分類し、表出、表現される遊び=造形活動の痕跡を造形作品として子どもたちに寄り添います。
保育士たちは、子どもはこうあって欲しいという子ども像を持たずに、子どもたち一人ひとりをよく観て、心の想い、心の奥底から発する欲求に共感する観派となるよう心がけています。子どもたちが個々に感じて、表現する行為を螺旋状に繰り返し深めていく子どもに寄り添う子ども主体、子ども中心の保育姿勢です。
この環境の中で育つ子どもは、自分は尊い存在であるという自己肯定感を身に付けます。
保育教諭の基本姿勢
子どもたちが不思議だと思う身体的感覚を育むための園庭を整え、自然の中に出かけ、体験を通して五感を揺さぶる活動を大切にします。
保育教諭は、子どもはこうあって欲しいという子ども像を持たずに、子どもたち一人ひとりをよく観て、心の想い、心の奥底から発する欲求に共感する観派となるよう心がけます。
私たち保育教諭は、常に、子どもたちの遊び=造形活動の深まりを求めて、どのように助言・支援していくべきか、そのあり方を研究実践します。
子どもたちの遊び=造形活動のプロセスを紐解く研究は、保育資質の向上に繋がります。
観派:子どもの本当の姿に寄り添いながら指導・援助する姿勢(待ちの保育姿勢)
像派:子どもはこうあるべきとの一律的な考えが前提となって、目指す事へ向かって指導・援助する姿勢
遊ぶ中で獲得する生活習慣
遊び=生活
子どもは、本来遊び戯れることによって成長すると、ドイツの教育者フレーベルが言いました。食事は食事というように、生活は生活、遊びは遊びという分断された考え方・捉え方を、遊び=生活、子どもの生活はすべてが遊びなんだという考え方に戻すことが、子ども理解への第一歩です。
遊びとは、自ら遊んでこそ遊びです。自ら遊んでこそ、その中で本当の生活習慣が身に付きます。要するに、後からみな忘れてしまう生活習慣ではない、そうしないと心身が安定しない、そうしないことには自分が納得しないという形の本物の生活習慣が身につくということです。やらされて身についた習慣ではない習慣、いわゆる人格にかかわる習慣です。
遊びを自らが発見するところからスタートする主体的な遊び・生活は、基本的な生活習慣も単に教えられる形で身につけるのではなく、感動を伴って獲得していくのです。そのことは、人格の形成のあり方にも大きな変化を与えます。私たち大人が、子どもの生活・遊びの捉え方を、子どもの本質に根ざした捉え方に変える、その姿勢が今、求められているのです。いうならば、大人が子どもの生活・遊びの捉え方を変えれば、子どもは生活習慣を感動を伴って獲得し、それによって人格の形成のあり方もまた変わってくるということです。
心が解放されれば、生活・遊びが本物に変わるのです。
生活・遊びが本物に変われば、おのずと生活習慣が身に付くのです。
おのずと付いた生活習慣が、人間としての成長を約束するのです。
社会性を育み
共に学ぶ
社会性を育む共に学び合い、群れて遊ぶ姿を大切にします。
大人も子どもも、共に生活する仲間としての関係を大切にしています。
その中で、お互いがぶつかり合い、助け合い、時には回り道をしながら相手との信頼関係を結んでいます。
様々な年齢の子ども集団は、自分たちの手でいろいろなルールや子どもなりのモラルを生み出し、さらによりよい集団を作っていきます。このことは人間社会のなかで生きていく基礎の力、豊かで望ましい人間関係を構築していく力となります。
群れて共に育ち合い、人間関係を構築する力、社会性を自らが培うのです。
乳幼児の育ちにとって、創造性(意欲)と社会性(人間関係構築能力)はいつの時代にも求められる不易のことです。
自らの力で遊びを発見し、拡げ、深めて、友達同士で豊かな自然体験や生活体験を重ねれば、表裏一体のものとして創造性と社会性を身に付けていくことができます。